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執筆者の写真望月 大仙

処世界さんの日記(四拾八)

令和二年二月十二日  達陀で練行衆は妙な格好をしている。それまでの重衣とはまた違った衣体だ。どうなっているのだろう? 〈参考 達陀のニュース記事〉 https://www.nara-np.co.jp/news/20200315090608.html  記事の写真をよく見るとどうにもヒラヒラした普段の衣とは違うように見える。私も初めはどうなっているのだろう?と思っておりました。  走りの行法が終わると、しばらくして後夜の悔過作法が始まり、それが終わると今度は大導師作法。大導師による祈りが始まります。  それを合図に練行衆はバタバタし始める。まずは達陀の邪魔になる差懸を後堂の隅に移動させる。次に衣をちょいちょいといじります。まずは袈裟の横被(手前に垂れている部分)を丸めて懐にしまい込み、背中の修多羅は脇から手前に持ってきて胸のあたりで結ぶ。ここまでは走りの時と同じ。  達陀では更に袈裟の前後を結び、背中の三角の僧綱領を折りたたむ。ここまでは一人でできる。次に達陀帽の中から紐を取り出す。何に使うかと言えば重衣を締め付けるためだ。  まず、重衣の袂を紙衣ごと丸める。ロールするのだ。腕のすぐ下までロール丸めたら紐で腕ごとグルグル巻きにする。反対側の腕もぐ~るぐる。締め付けすぎると圧迫されてだいぶキツイ。加減が重要だ。



 これで達陀モードになった練行衆は帽子を被りそれぞれの持ち場に着きます。南衆、南二、中灯、処世界は北座。堂司、衆之一、北二、権処世界は南座へ。これは達陀の初めに行う八天の役割に依ります。ちなみに処世界さんは最後で法螺を吹いています。 〈達陀 八天〉 https://youtu.be/dZQYA9QCJ2Y?t=964  それが終わるといよいよ松明の出番が迫ってまいります。さて、達陀における処世界さんの最初の仕事とは何か!?きっとほとんどの方がご存知ないでしょう…。そう、それは池の移動です。  「つけんだりやぁ〜」  「まだし〜まだし〜」  この掛け合いはNHKの放送でも流れていましたね。内陣の正面で待機している呪師が松明に火がついたかどうかを尋ね、後堂で火をつけている大導師が返事をする。達陀に用いられる松明は、初夜の上堂に用いられるそれとは異なり、杉などの葉っぱは用いず「削りかけ」と呼ばれるキノコのような不思議な形に加工したをした木材が着火剤として用いられています。  着火するのは内陣の後ろ側(後堂と呼ばれます)ですが、着火する際に松明の下に配置されているのが池です。これは消化する際にも用いるための水場で、1メートル×50センチほどの四角い木桶で水が張られています。後堂中央北で火をつけ終えたらこの木桶はすぐに内陣の南東に移動します。これは水が張ってあるわけですからそこそこの重さがあり、なかなか良い運動になるわけで、体力の有り余っている若手が押し運ぶ役割を担っているのです。そして、達陀が終わった後にはこの南東の池で消化する流れになっております。  さすがにこれを移動させている姿は誰も見ていないことでしょう。え?見たことある?そんな場面は見なくて良いので松明に集中してください。   

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処世界さんの日記【目次】

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