【神名帳探訪記②】
三重県鈴鹿市 椿大神社(no.376)
「ツバキオオカミノヤシロ」と読むそうだ
「椿」というと私は東大寺開山堂の糊こぼしを思い浮かべますが
椿は常緑の輝く葉を持ち、古来より神聖視されてきた
猿田彦大神が影向した椿の神木があったとか
境内には椿がそこかしこに植えられ、盛りの頃には美しい花々に荘厳されるだろうと
さて、多度大社から椿大神社までは1時間とかからない
新名神高速道路の鈴鹿PAから5分ほど
駐車場も広く、本当に多くの参拝者が訪れるのだろうことが想像される。
このアクセスの良さは魅力的。
駐車場に駐車場に車を停めて早速お参りをしようと思ったが、ふと昼食を食べていないことを思い出した。
左を見れば 椿会館 と呼ばれる大きな会館があったが、Google で少し調べるとそこにはどうも 「とりめし」なる 名物があるらしい。
そうであれば食べない選択肢はない。会館の食堂は社員食堂のような質素さ。とりめしには松竹梅のコース。こういう時は真ん中を選ぶのが人間の性質。もずくと水物のついた竹コースを頼むとあっという間にやってくる。
飯は鳥肉だけではなく様々な食材が入っている混ぜご飯。スルスル と食べられてしまうし、汁物もいい塩梅。もずくは一息で飲み干す。
食べるのが早すぎるのも考えもの。あっという間に食べ終わってお茶を一服。このお茶がなかなかに 美味しい。後から知ったが 鈴鹿のあたりでは非常にお茶が盛んだそう。この食堂の無料のお茶もとても美味しく後で売店で買って帰ることにした。
参道を進むと正面に椿大社と書かれた鳥居が現れる。鳥居の前には美しい紅葉。入り口には獅子堂 なるお堂があり、これはどうも 聖武天皇が 奉納した獅子の頭が祀られているとのことである。
本殿は広く清潔で、奥の方で巫女さんが掃除をしているのが見えた。奥には滝があるらしいが禊として利用する人以外は入れないということで見ることはできなかった。またいつか訪れる時にはぜひ滝行をしたい。
境内を散策していると様々な社や、お地蔵さんなど多くの神仏が祀られている。こういうものは歴史の中で増えていったのだと感じられる。
それにしても歩けばどこを見ても 椿が植わっている。この時期だと椿の中では 早咲きのものであればもう 花をつけていてもおかしくはないが、この日は出会えず終い。 こちらの方がもしかして少し暖かいということもあるのだろうか。
椿といえば東大寺開山堂にある糊こぼしが非常に有名である。東大寺のお水取りでもこの糊こぼしの椿を模して造花の椿を作り、それを 本堂に飾る 。
なぜ 椿を飾る必要があるんだろうかと昔から思っていたのだが、椿というのは常緑の木であり その葉は太陽を照らす 艶めきを持つ。
そのことから 椿というのは 太陽の力を持つ 神聖な樹木であると 昔からされてきた。この 椿大神の社もその一つだ猿田彦大神 が影向したと言われる 椿の木があったとかつて童謡に語られた。
椿大神社に 限らず、椿を神社の名前に取り入れている神社は いくつか 存在するし、椿の木を神木とするものを多く、椿の木 そのものをご神体とする社も存在する。
他にも 魔除けのための杖として 椿が用いられることもしばしばあった。そのような 神仏の祓いとして用いられる 椿であるから2月堂のお水取りの神事としての側面が この糊こぼしを用いて荘厳するという作法の源流になっていることも十分に考えられる。
ただし この 椿た狼の社の椿 という名称に関しては 古くからこの名称であったかと言うとそうでもないらしく どこかで この名前に変わったのではないかと言われる。
また椿は春の木 とも言われ、万葉集においてもいくつか読まれている。そういう意味で修二会が終わると春が来るという風な文言も乗りこぼしが咲くと春が来ると言い換えることができるのではないか。
逆に言えば 春をもたらす神のお告げや、神の影向のような立ち位置であったことから 非常に神聖視されていたのである。ゆえに この 椿を用いる 道具というのは非常に少なく椿油が用いられるようになったのも近世からである。
さて、当山には東大寺より譲り受けた糊こぼしがある。お寺には2本植えている。そのうち一つは 本堂の前、もう一つは庫裏の玄関の前に植えてある。
今までは鉢植えだったが今年から露地に植えかえたものであるが、本堂の前の糊こぼしは元気いっぱい。今も多くの蕾をつけている。一方で庫裏の前は日当たりがあまり良くないからかか、つぼみをほとんど つけていない。日当たりが強すぎても弱すぎてもうまくいかない。椿の難しさを感じます。
今度 橋村管長猊下にお伺いを立てて、こちらの椿の植え替えなども相談したいなと考えている。どちらにせよ もし 椿の花が咲いたならばまた SNS では ブログにて 皆様にお披露目をしたいと思う 。こちらの写真は以前 咲いたもの。
春の訪れを教えてくれる糊こぼしであるが どうもうちの子たちはだいぶ 春を先取りしてしまう 傾向があるようで、私が二月堂へと旅立つ お見送りをしてくれてきた。今回はどうなるかな?
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