先日の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では後白河法皇が鎌倉時代に再建された大仏様を開眼するシーンが出ていましたね。
本当に一瞬でしたので記憶にとどまらなかったかもしれません。(東大寺の公式Twitterでも一瞬だったと残念がっていました)この時に使用された筆は現在も正倉院に保管されているそうですが、東大寺で筆、といえば私は他の筆のことが頭に浮かんできました。 それは「天平筆」と呼ばれる筆で、こちらも正倉院に保管されているものです。別名雀頭筆。その名の通り天平時代に用いられていた筆で、雀の頭のような可愛らしい見た目をしております。 その製法は他の筆とはかなり異なります。通常の筆は動物の毛を用いて穂先を作りますが、この天平筆は毛の間に紙を巻いて作るそうです。
これは当時の中国で用いられていた手法です。そのため普段使っている筆のように水洗いしてしまうと一度でだめになってしまうとか。 今年行われた正倉院展でもこの筆は展示されていたそうで、光明皇后の書もこの天平筆を用いて書かれたのでは。正倉院には17本ほど収蔵されており、筆には帽子のようなケースがついていたり、象牙や様々な装飾がなされた素晴らしい逸品ばかりだとか。うーん、ぜひとも見てみたかった。 しかし、筆というのは見るばかりでは面白くありません。やはり実際に書いてみないと。実はこの天平筆ですが、現在でもこの筆を手に入れることはできるのです!ただし、作られているのはたったお一人しかいらっしゃらないとか。
現在は後継の方がいらっしゃるのでこの素晴らしい伝統的な技術が途絶える心配はなさそうです!ご安心を。
さて、そんな天平筆ですが縁あって私も一本持っております。こちらは私の書道の先生から紹介されて買い求めたものでして、貴重なものなので中々使う決心がつかずにずっと部屋に飾ってありました。
筆は消耗品ですのでせっかく良いものを買ってももったいないオバケに取り憑かれてしまいがちで、結局安物の筆ばかり使ってしまうのです。しかし、このブログを書くにあたってせっかくなのでおろしてみることに。
もちろん、書くのはお経です。お手本を下に敷いていざいざ写経。当山では写経を受け付けておりますが、堂内での写経はもちろん、ZOOMを使って一緒に写経をする時間を設ける予定です。
当山に収められた写経は祈願のための写経は1月の初不動でお焚き上げをしておりますが、供養のための写経であれば七月の施餓鬼の折に護摩で焚き上げております。 それでは早速写経をしていきましょう。この筆はふっくらとしている部分は使わず、先端の細い部分のみを使います。使い方は中国の小筆に近いかもしれません。
今回は普通の持ち方で写経を行ったのですが、使ってみた感覚では手首を固定する持ち方をしたほうが良いかもしれないと思いました。次回はまた違う持ち方で試してみようかな? この筆は天平時代の写経でも用いられていたようで、写経をするにもってこいです。筆をうまくすべらせると細い線だけでなく、楷書らしい腰のある線を書くことができます。見た目以上に筆先は柔らかく、曲線も思うままに書くことができます。
ただ、先しか使えませんので、まだ下ろしたてで糊が残っていることを加味しても墨をつける回数は多くなりがちです。写経を終えるにもそれなりの時間がかかりますね。光明皇后も苦労してお書きになっていたのでしょうか。
書き終わりました。うーん、お手本が良いからまるで字がうまくなったように感じられますね。次はお手本を見ながらかけたらと思いますが、同じ大きさで字を書き続けるというのが非常に苦手で。かと思えば、書道を習っていなくても真っ直ぐかける方もいらっしゃる。なんででしょうね。才能の問題でしょうか?お稽古あるのみです。
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